単体規定

シックハウスとは?換気回数などの建築基準法の規制について

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今回は『建築基準法のシックハウス』についての記事です。

 

新築した建物の建築材料からの化学物質によって、空気汚染され、めまい、吐き気、頭痛などの症状が報告され、これを『シックハウス症候群』と呼んでいます。

よって、建築基準法においてのシックハウス検討(建築基準法第28条の2)とは、シックハウスの原因となる『建築材料からの化学物質』についての規制です。平成1571に施行された、わりと新しい法文です。

今回は、どんな化学物質に、どんな措置をすべきか。その規定の内容などを確認してみましょう。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
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著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

建築基準法で規制の適用を受ける化学物質について

冒頭でお伝えした通り、シックハウス検討は『建築材料の化学物質』について規制を受けるものです。

その建築材料の化学物質とは、3あります。

規制対象とする化学物質

①石綿(アスベスト)

②クロルピリホス

③ホルムアルデヒド

以上3つ、それぞれの規制も異なります。順番に確認してみましょう。

 

石綿(アスベスト)に関する規制

石綿(アスベスト)については、簡単です。建築基準法第28条の2第一号、第二号より、

建築材料に石綿の添付されたもの使用する事をする告示に定めたものを除く※告示1172

3つの化学物質の中でも1番厳しい規制になっています。

 

クロルピリホスに関する規制

クロルピリホスの規制については、石綿と少し似ています。建築基準法第28条の2第三号、令第20条の6より、

居室を有する建築物には建築材料にクロルピリホスの添付されたもの使用する事を禁止する告示に定めたものを除く※告示1112

ちょっと待った!!

石綿(アスベスト)とほぼ一緒で、禁止している事に変わりないじゃない!どこが違うの?

それは、『居室を有する建築物』ってところがポイント!

石綿は居室が無い建築物にも使ってはいけません。一方、クロルピリホスは居室が無い建築物には使っても良い事になっています。石綿と似ていますが、混在しないように注意が必要です。

居室の定義については以下の記事で確認してみてください。

 

ホルムアルデヒドに関する規制

3つの化学物質で1番規制が複雑なのが、このホルムアルデヒドです。大きく分けると、このホルムアルデヒドだけでも、3つの規制があり、すべての適合が必要になります。

ホルムアルデヒドに関する規定

以下3すべてに適合させる事

①内装仕上げの制限

②換気設備の設置

③天井裏等の制限

ホルムアルデヒドは、先程紹介した、石綿(アスベスト)やクロルピリホスのように、使用する事を禁止にはしていません。しかし、それなりに制限があります。

ちなみに、ホルムアルデヒドの規定も、居室を有する建築物に対するものなので、居室が無い建築物については検討不要です。(クロルピリホスと同じ)

では、それぞれ確認してみましょう。

 

①内装仕上げの制限

まず、第一に内装仕上げにはできるだけホルムアルデヒドが少ないものを使用しなければなりません。(建築基準法施行令第20条の7

ホルムアルデヒドが少ないとか、多いとかってどうやって見分ければいいの?
F☆☆☆☆ってやつ見た事ない?

あれで判別するの。

ホルムアルデヒドの量は、『F☆☆☆☆』この、星の量で決まっています。

星が多ければ多いほど、ホルムアルデヒドの量は少ないです。(マックス星4つ。つまり、F☆☆☆☆が1番ホルムアルデヒドの量が少ない)

制限内容を簡潔にまとめると、

内装仕上材に『F☆☆☆☆』を使うのであれば面積無制限

それより多く含むものは、居室の種類及び換気回数に応じて建材の面積が制限される

つまり、『F☆☆☆☆』にしておけばもう気にする必要はありません。

それ以外(例えば、F☆☆☆やF☆☆を使いたい場合など)については、以下の表にまとめたので、居室の種類、換気回数で確認してみてください。

居室の種類 換気回数 面積制限
住宅等の居室 0.5回/時以上 F☆☆相当:床面積の0.3倍 F☆☆☆相当:床面積の2倍
0.7回/時以上 F☆☆相当:床面積の0.8倍 F☆☆☆相当:床面積の5倍
その他の居室 0.3回/時以上 F☆☆相当:床面積の0.3倍 F☆☆☆相当:床面積の2倍
0.5回/時以上 F☆☆相当:床面積の0.7倍 F☆☆☆相当:床面積の4倍
0.7回/時以上 F☆☆相当:床面積の1.1倍 F☆☆☆相当:床面積の6.6倍

 

②換気設備の設置

ホルムアルデヒドは、内装仕上材を制限するだけではダメです。更に、換気設備も付けなくてはなりません。

どうして?もう内装はホルムアルデヒドは十分少ないものを使ってるから大丈夫なんじゃないの?
それは、ホルムアルデヒドは建物内に持ち込む家具にも含まれている事が多いから、予め建築基準法で対策をしてるんだよ!

実は、ホルムアルデヒドは家具からの発散の恐れがあるんです。そういったものには換気設備で対策をしています。(建築基準法施行令第20条の8

住宅等の居室の場合、換気回数0.5/h24時間換気システムを用いる事

(その他の場合は換気回数0.3回/h)

 

③天井裏等の規制

1番最初にご紹介したのは、内装仕上の部分でしたが、今回は『天井裏』の部分です。

どんな基準なのかというと、告示第274号第1第三号より、

天井裏等は、以下のいずれかに適合させる事

①天井裏の下地材をF☆☆☆以上にする

②気密層や通気止めを設けて居室部分と分離させる

③換気設備の措置を行う

 

シックハウス検討についてわかりやすい参考書

シックハウスは、実は奥が深い規定です。今回の記事でわからないところがあれば、上記の参考書を確認してみてください。

非常によくまとまっており、わかりやすいです。

 

まとめ:シックハウスで制限を受ける化学物質は3つ

制限を受ける化学物質は石綿(アスベスト)、クロルピリホス、ホルムアルデヒド

この3つです。

そして、それぞれ規制内容が異なります。

石綿(アスベスト) 建築材料に石綿の添付されたもの使用する事を禁止する
クロルピリホス 居室を有する建築物には建築材料にクロルピリホスの添付されたもの使用する事を禁止する
ホルムアルデヒド 以外3つすべてに適合 ①内装仕上げの制限

②換気設備の設置

③天井裏等の制限

 

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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