建築基準法

耐火性能検証法とは?【わかりやすく解説してみた】

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耐火性能検証法って何?

とにかくわかりやすく解説してほしい!

こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。

まずは、結論からまとめると、

✔️耐火性能検証法とは、『主要構造部が耐火構造』の代わりになるもの

✔️あくまで代わりなので、実際に主要構造部が耐火構造じゃないってのがポイント(キーワードは耐火性能関係規定

耐火性能検証法は、主要構造部が耐火構造じゃ無いのに、耐火構造と同じような扱いを受けます。

でも、全部一緒じゃありません。だからこそややこしい…。

今回はわかりやすく解説してみたので確認してみてください!

twitter:sozooro

では、早速解説していきます!

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

耐火性能検証法とは?

耐火性能検証法とは、耐火建築物の要件である『主要構造部が耐火構造にする』の代わりになるもの

くどいようですが、あくまで『代わり』です。ここだけは頭に入れて、先の内容を確認してみてください。

建築基準法において、建築物を『耐火建築物』にするとか『準耐火建築物』にするとかは大事です。これらは、建築物の防火性能を示す物差しみたいなものです。

しかし、ややこしい事に『耐火建築物』と『主要構造部を耐火構造にする』は全くの別物なのです。まずは、ここからしっかり押さえていきましょう。

本当にややこしいわね!どこがどう違うの!?
耐火建築物は2点セット揃って初めて要件を満たすのです。下の表を見ていただければわかりやすいです!

耐火建築物=『①主要構造部を耐火構造にする』+『②延焼ラインに防火設備』

だから、『主要構造部を耐火構造にする』というのは、耐火建築物にする為の要件の一つでしかありません。

もろもろわからないキーワードがありそうな方は当サイトで詳しく解説しているの確認してみてください。

さて、本題に戻します。今回解説する『耐火性能検証法』は『①主要構造部を耐火構造にするの代わりになります。

では、代わりとして考えてみると、

耐火建築物=『①主要構造部が耐火性能検証法による性能を有する』+『②延焼ラインに防火設備』

これでも、法文上は耐火建築物とみなす事ができます。だから、主要構造部を耐火構造にしなくても『耐火建築物』にできる代わりの方法です。

法文で確認する

建築基準法2条九号の二

耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1) 耐火構造であること。
(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

耐火性能検証法とはどんな技術的基準、検証方法か?

✔️建築基準法施行令第108条の3第1項→求められる技術的基準

✔️建築基準法施行令第108条の3第2→具体的な検証方法

性能規定なので、ちょっと内容複雑ですが、項毎にすっぱり分かれているのこのあたりは簡単ですね。これは読んで字のごとくなので、法文で確認してみてください。

法文で確認する

建築基準法施行令第108条の3

(耐火建築物の主要構造部に関する技術的基準)

求められる技術的基準→第二条第九号の二イ(2)の政令で定める技術的基準は、主要構造部が、次の各号のいずれかに該当することとする。

一 主要構造部が、次のイ及びロ(外壁以外の主要構造部にあつては、イ)に掲げる基準に適合するものであることについて耐火性能検証法により確かめられたものであること。
イ 主要構造部ごとに当該建築物の屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に、当該主要構造部が次に掲げる要件を満たしていること。
(1) 耐力壁である壁、柱、床、はり、屋根及び階段にあつては、当該建築物の自重及び積載荷重(第八十六条第二項ただし書の規定によつて特定行政庁が指定する多雪区域における建築物の主要構造部にあつては、自重、積載荷重及び積雪荷重。以下この条において同じ。)により、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
(2) 壁及び床にあつては、当該壁及び床の加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度(当該面が面する室において、国土交通大臣が定める基準に従い、内装の仕上げを不燃材料ですることその他これに準ずる措置が講じられている場合にあつては、国土交通大臣が別に定める温度)以上に上昇しないものであること。
(3) 外壁及び屋根にあつては、屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものであること。
ロ 外壁が、当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が一時間(延焼のおそれのある部分以外の部分にあつては、三十分間)加えられた場合に、次に掲げる要件を満たしていること。
(1) 耐力壁である外壁にあつては、当該外壁に当該建築物の自重及び積載荷重により、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。
(2) 外壁の当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度(当該面が面する室において、国土交通大臣が定める基準に従い、内装の仕上げを不燃材料ですることその他これに準ずる措置が講じられている場合にあつては、国土交通大臣が別に定める温度)以上に上昇しないものであること。
二 前号イ及びロ(外壁以外の主要構造部にあつては、同号イ)に掲げる基準に適合するものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。
具体的な検証方法→2 前項の「耐火性能検証法」とは、次に定めるところにより、当該建築物の主要構造部の耐火に関する性能を検証する方法をいう。
一 当該建築物の屋内において発生が予測される火災の継続時間を当該建築物の室ごとに次の式により計算すること。
tf=Qr/60qb
(この式において、tf、Qr及びqbは、それぞれ次の数値を表すものとする。
tf 当該室における火災の継続時間(単位 分)
Qr 当該室の用途及び床面積並びに当該室の壁、床及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の表面積及び当該部分に使用する建築材料の種類に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した当該室内の可燃物の発熱量(単位 メガジュール)
qb 当該室の用途及び床面積の合計並びに当該室の開口部の面積及び高さに応じて国土交通大臣が定める方法により算出した当該室内の可燃物の一秒間当たりの発熱量(単位 メガワット))
二 主要構造部ごとに、当該主要構造部が、当該建築物の屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に、前項第一号イに掲げる要件に該当して耐えることができる加熱時間(以下この項において「屋内火災保有耐火時間」という。)を、当該主要構造部の構造方法、当該建築物の自重及び積載荷重並びに当該火熱による主要構造部の表面の温度の推移に応じて国土交通大臣が定める方法により求めること。
三 当該外壁が、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時の火熱が加えられた場合に、前項第一号ロに掲げる要件に該当して耐えることができる加熱時間(以下この項において「屋外火災保有耐火時間」という。)を、当該外壁の構造方法並びに当該建築物の自重及び積載荷重に応じて国土交通大臣が定める方法により求めること。
四 主要構造部ごとに、次のイ及びロ(外壁以外の主要構造部にあつては、イ)に該当するものであることを確かめること。
イ 各主要構造部の屋内火災保有耐火時間が、当該主要構造部が面する室について第一号に掲げる式によつて計算した火災の継続時間以上であること。
ロ 各外壁の屋外火災保有耐火時間が、一時間(延焼のおそれのある部分以外の部分にあつては、三十分間)以上であること。

(3項以降省略)

耐火性能検証法は、『主要構造部が耐火構造じゃない』の罠

耐火性能検証法による性能を有しても、『主要構造部は耐火構造じゃない』故に出てくる問題がたくさんある

さっきからくどいわね〜!

さっきの説明で、耐火性能検証法をやって、耐火建築物に出来たんだから、もう他の事はどうでもいいじゃないの!

どうでも良くないから困るんですよ…。

なぜなら、建築基準法には、『主要構造部を耐火構造』にしないと、適合しない事がたくさんあるんです…。

いくら耐火建築物にしても、万能じゃ無いのです!

例えば、建築基準法施行令第123条の2第2項の『屋外避難階段』の基準の中にこんなのがあります。

建築基準法施行令第123条第2項

(一、二号省略)

三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。

階段?階段って主要構造部よね?

あれ、これって耐火性能検証法をしている場合ってどうなるの?

耐火建築物でも、全然関係無いので、素直に階段だけ耐火構造にしなきゃいけないのです…。

実は、こんな話が建築基準法にはたくさんあります。いくつか紹介します。

建築基準法施行令第123条第1項

(本文省略)

一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。

(以下省略)

建築基準法施行令第114条第1項

長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

(以下省略)

こんな感じの話がたくさん出てきます。これは主要構造部を素直に耐火構造にしていれば全然気にしなくていいのです。しかし、何度も何度も言っていますが、耐火性能検証法は主要構造部は耐火構造ではないので、こういうのをいちいち気にしなきゃいけない事になります。

内容はわかった。

でも、説明を聞いたら耐火性能検証法でやるメリットがどんどんわかんなくなってきた…

結局、主要構造部は耐火構造にしなきゃいけなくなるじゃない…

ここまでの説明だとそうなっちゃいますよね!

安心してください、そんな事ありません!

なぜなら、『耐火性能関係規定』であれば、耐火性能検証法を使った場合、主要構造部は耐火構造とみなされます!

ここで出てくるのが、『耐火性能関係規定』です。この規定を考える時は、耐火性能検証法を行った建築物は主要構造部が耐火構造とみなされます。みなし規定なので、強制です。

少し話が脱線しますが、要するに竪穴区画の逃れで耐火性能検証法は使えないって事です。なぜなら、主要構造部は耐火構造とみなされ、この規定は強制規定だからです。(設計者の意思は関係ないって事)気になった方は以下の記事を読んでみてください。竪穴区画逃れる方法について書いてありますが、耐火性能検証法では使えないって事がわかるはず。

耐火性能関係規定とは?

建築基準法施行令第108条の3第3項に記載があります。まとめてみました!

耐火性能関係規定

第112条第1項、第3項、第7項から第11項、第16項から第21項(防火区画関係)

第114条第1項、第2項(界壁、間仕切り関係)

第117条第2項(避難規定上の区画)

第120条第1項、第2項及び第4項(直通階段)

第121条第2項(2以上の直通階段)

第122条第1項(避難階段の設置)

第123条第1項及び第3項(屋内避難階段、特別避難階段)

第123条の2(メゾネット住戸)

第126条の2(排煙設備)

第128条の4第1項及び第4項(火気使用室の内装制限)

第128条の5第1項及び第4項(特殊建築物の内装)

第128条の6第1項(区画避難検証法)

第129条第1(階避難検証法)

第129条の2第1(全館避難検証法)

第129条の2の4第1項(給水管の配管設備)

第129条の13の2(非常用の昇降機の設置)

第129条の13の3第3項及び第4項(非常用の昇降機の構造)

第137条の14(独立部分)

第145条第1項第一号及び第二項(道路内建築の基準)

当たり前ですけど、この耐火性能関係規定以外の法文で

主要構造部の要求があったら素直に耐火構造にしてくださいね!

法文で確認する

建築基準法施行令第108条の3第

主要構造部が第一項第一号又は第二号に該当する建築物(次項に規定する建築物を除く。)に対する第百十二条第一項、第三項、第七項から第十一項まで及び第十六項から第二十一項まで、第百十四条第一項及び第二項、第百十七条第二項、第百二十条第一項、第二項及び第四項、第百二十一条第二項、第百二十二条第一項、第百二十三条第一項及び第三項、第百二十三条の二、第百二十六条の二、第百二十八条の四第一項及び第四項、第百二十八条の五第一項及び第四項、第百二十八条の六第一項、第百二十九条第一項、第百二十九条の二第一項、第百二十九条の二の四第一項、第百二十九条の十三の二、第百二十九条の十三の三第三項及び第四項、第百三十七条の十四並びに第百四十五条第一項第一号及び第二項の規定(次項において「耐火性能関係規定」という。)の適用については、当該建築物の部分で主要構造部であるものの構造は、耐火構造とみなす。

まとめ:耐火性能検証法は『主要構造部が耐火構造』のだいたい代わりになる

✔️耐火性能検証法とは、『主要構造部が耐火構造』の代わりになるもの

→耐火建築物になる条件の『主要構造部が耐火構造』を主要構造部が耐火性能検証法による性能を有するにする事が可能である。

✔️あくまで代わりなので、実際に主要構造部が耐火構造じゃないってのがポイント(キーワードは耐火性能関係規定

→耐火性能関係規定に限り、主要構造部を耐火構造としてみます事が出来る

以上のポイントをしっかり押さえていれば、耐火性能検証法は『主要構造部が耐火構造』の代わりになると思います。しかし、完全な代わりとは言えないところには注意したいですね!(耐火性能関係規定に含まれない法文の主要構造部については耐火構造にする必要亜あるので)

最後までありがとうございました

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ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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