建築基準法

用途変更!構造検討不要な法的根拠と実際は構造検討必要な理由

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用途変更に構造検討は必要なんでしょうか?

 

建築基準法上は不要です。

(法的に説明できます)

 

でも、実際の申請では必要です。

(これにも理由があるのです)

 

結論、構造検討してください。

 

なのですが、これだけでは納得できないと思うのでそれぞれの理由を今回はご紹介します。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
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著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

建築基準法上によると、用途変更は「行為」なので構造検討不要

そもそも、新築とか増築みたいな「工事」とは違うのです。

あくまで、用途変更は「行為」であって、「工事」では無いのです。

工事 新築、増築、移転、改築、大規模修繕、大規模模様替
行為 用途変更

「だから?何が違うの?」

と思うかもしれませんが、簡単に言うと、

「行為」と「工事」の違いは既存不適格が継続するかどうか、という事。

 

少しややこしくなりますが、法的に言ってしまえば、建築基準法第3条3項三号、四号に該当しないから、既存不適格が継続するという事です。

 

建築基準法第3条
 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。(色々書いてありますが、既存不適格が使える建築物という事です)

3   前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、適用しない。(つまり、該当したら既存不適格は継続しません)

(省略)

 三 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地

 四 前号に該当する建築物又はその敷地の部分

(省略)

 

 

この三号、四号に、用途変更は含まれていませんよね?

よって、用途変更では、法的な訴求は出ないという事ですね!

 

と、言いたいところなのですが(笑)

確かに、既存不適格は原則継続しますが、

実は用途変更だけは特別枠で、訴求条文が用意されています。

なので、完全に訴求が無いという事ではありませんが、増築や大規模修繕とは違う訴求なので、少し頭を切り替えて考えていいと思います。

 

それが、建築基準法第87条第2項3項の内容です。

念の為にそちらの条文も載せておきますが、細かい話をすると脱線するので、もう結論から言います。

用途変更の訴求内容に、構造耐力の規定である建築基準法第20条は含まれていません!

建築基準法第87条
建築物の用途を変更して第6条第1項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第3項及び第5項から第12項までを除く。)、第6条の2(第3項から第8項までを除く。)、第6条の3(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条第1項並びに第18条第1項から第3項まで及び第12項から第14項までの規定を準用する。この場合において、第7条第1項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。

 建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第48条第1項から第13項まで、第51条、第60条の2第3項及び第68条の3第7項の規定並びに第39条第2項、第40条、第43条第2項、第43条の2、第49条から第50条まで、第60条の3第2項、第68条の2第1項及び第5項並びに第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定を準用する。

 第3条第2項の規定により第24条、第27条、第28条第1項若しくは第3項、第29条、第3条、第35条から第35条の3まで、第36条中第28条第1項若しくは第35条に関する部分、第48条第1項から第13項まで若しくは第51条の規定又は第39条第2項、第40条、第43条第2項、第43条の2、第49条から第50条まで、第68条の2第1項若しくは第68条の9第1項の規定に基づく条例の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。

 増築、改、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合

 当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合

 第48条第1項から第12項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合

 

無いですよね?

つまり、法的には構造検討は不要です!

 

しかし、用途変更に構造上の変更が伴うのが明らかなので検討必要

法的には用途変更は構造検討は不要なのですが、現実は検討が必要です。

それはなぜかと言うと、用途変更には構造上の変更を伴う事が多く当時の構造規定を基に、構造上安全な範囲内で用途変更が行われているという事は最低限確認をしなければならないからです。

 

例を挙げますと、

①当時の荷重条件より、積載荷重が増加

これは、高い確率で発生する問題です。

例えば、一戸建て住宅から学校に用途変更をする場合、施行例第85条より、積載荷重が明らかに増加してしまい、構造上安全な範囲の用途変更とは言えません。

②構造耐力上主要な部分に変更発生

例えば、壁を打ち抜いたり、床に穴を空けた場合ですね。これも構造上安全な範囲の用途変更とは言えません。用途変更として取り扱えない範囲になる可能性も有ります

 

以上の事態が発生した場合は荷重の検討や構造の検討が必要になります。

なんで?法的にいらないなら、構造検討出したく無い!!

と思う方もいるかもしれませんが、こちらについては特定行政庁でも提出を義務付しているところが多々あり、法的には不要でも、現状だと必ず必要になってきてしまいます。

用途変更には構造の変更を伴う内容が多いので安全かどうかの確認は必要

 

まとめ:用途変更時は積載荷重が増えない事を確認すべし

用途変更について、法的には不要だけど実際は検討が必要、という事についてご説明させていただきました。

実際にどうやって検討したらいいのか?というのは難しいところがありますよね。

当時の構造図書が残っていれば話は簡単なのですが、構造計算書まで綺麗に残っていない事もよくあると思います。

いずれにしても、慎重に取り扱いをしたい内容なので、審査機関に相談しながら進めていきましょう!

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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