一般構造

採光には規制が3つもある。採光無窓=非常用照明の考えは危険!

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採光無窓になったら非常用照明を設置すればいいか!
その考え方は大変危険です!

なぜなら、採光無窓と言っても、3つも種類があるからです。twitter:sozooro

採光には3つの法文があり採光無窓になる条件』も、『制限内容』も異なります。正しく理解していないと後で痛い目を見る、、という事もあり得ます。

今回はそんな採光についてできるだけわかりやすくまとめてみました。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

採光無窓とは?

採光無窓とは、所定以上の採光上有効な開口部を確保できない居室(採光計算でNGのこと

居室は、原則として『所定以上の採光上有効な開口部』が必要です。この採光上有効な開口部の面積を求めるのが、採光計算です。

採光上有効な開口部=窓の開口面積×採光補正係数

採光計算については、以下の内容を確認してください。

採光無窓になりやすい居室、つまり、採光計算でNGになりやすい居室は、『狭小敷地の居室』です。狭小敷地では、採光補正係数が0になることが多いです。この場合、採光上有効な開口部は0となってしまうので、採光無窓になってしまいます。

採光無窓が関わる3つの規制

採光無窓に関わる規制は3つある

  • 採光義務(法28条)
  • 避難規定全般(法35条)
  • 不燃区画(法35条の3)
ええ、3つもあるの?この3つは、何が違うの?
主として…『検討が必要になる居室』『無窓居室になる条件』『無窓居室になった場合の規制内容』が異なります!

まずは3つの採光の法文を整理してみましょう。

検討が必要になる居室 無窓居室になる条件 無窓居室になった場合の規制内容
採光義務(法28条) 住宅・学校・病院・診療所・寄宿舎の居室 採光上有効な開口部>居室面積/5・7・10 必ず適合が必要
避難規定全般(法35条) 全ての居室 採光上有効な開口部>居室面積/20 直通階段の設置
屋外階段
手すり高さ
敷地内通路
非常用の照明装置
廊下の幅
2以上の直通階段
不燃区画(法35条の3) 全ての居室 以下2ついずれの開口部も無い居室
・採光上有効な開口部>居室面積/20
・直接外気に接する避難上有効な開口部
居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない

 

法第28条 住宅や病院などの一部の用途は採光を確保しなければならない

クリックで建築基準法28条を確認

建築基準法28

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。

住宅だと一番ネックになるのはこの法28条でしょう。基本的には住宅の居室はただし書きに該当させないと絶対に採光の確保が必要になります。

が今計画してるの、『事務所』なんだけど、この場合はどうなの?
事務所なら法第28条の制限は無いので、無視してもokです!

法28条以外の残りの2つ、法35条と法35条の3だけ適合させてください。

法28条の詳しい基準については、以下の内容を確認してください。

法第35条 無窓になると避難規定がかかってくるが小さい建物なら比較的なんとかなる

クリックで建築基準法35条を確認

建築基準法35条

別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物というのが、令第116条の2で無窓になってしまっている居室です。

無窓に伴って、以下の法規制が出て来ます。(小規模建築物だったらそこまで難しくないと思います)

私のサイトでも、それぞれの規制について解説しているので、確認してみてください!

法第35条の3 無窓になった場合、主要構造部木造だったら適合が困難

クリックで建築基準法35条の3を確認

建築基準法35条の3

政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。

法第35条の3の検討が無窓になってしまった場合、主要構造部を耐火構造にするか、不燃材で作る事になりますが、木造だと適合が厳しいです。木造耐火も最近はやりやすくなりましたが、それでもかなり厳しいです。

ただし、法35条の3の無窓検討方法にのみ、少し違った検討方法があるのはご存知ですか?法文でご説明します。

【施行令111条】 法第35条の3法第87条第3項において準用する場合を含む。の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。

 面積(第20条の規定により計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の1/20以上のもの

 直接外気に接する避難上有効な構造のもので、かつ、その大きさが直径1m以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、75cm以上及び1.2m以上のもの

マーカーのとこです!

直接外気に接する避難上有効な構造の開口部で、その開口部の大きさが750mm✖️1200mm、1m円(非常用進入口と全く同じですよね)必要です。が、これを満たせば通常の採光計算は不要です。

これって少し希望持てませんか?これを満たせば、狭小地で採光取れない時も居室を作る事ができるかもしれません。

ちなみにこの直接外気に接する避難上有効な構造の開口部の判断は申請先に確認した方がいいのですが、当該開口部から道路まで避難できる通路や避難器具(2階だった場合)が考えられます。

また、最新の法改正によって、法第35条の3はさらなる緩和が追加されていますので、確認してください。

まとめ

✔️建築基準法では、採光に関する規定が3つ存在する

  • 採光義務(法28条)
  • 避難規定全般(法35条)
  • 不燃区画(法35条の3)

✔️それぞれの規制内容等は以下のとおり

検討が必要になる居室 無窓居室になる条件 無窓居室になった場合の規制内容
採光義務(法28条) 住宅・学校・病院・診療所・寄宿舎の居室 採光上有効な開口部>居室面積/5・7・10 必ず適合が必要
避難規定全般(法35条) 全ての居室 採光上有効な開口部>居室面積/20 直通階段の設置
屋外階段
・手すり高さ
・敷地内通路
非常用の照明装置
廊下の幅
2以上の直通階段
不燃区画(法35条の3) 全ての居室 以下2ついずれの開口部も無い居室
・採光上有効な開口部>居室面積/20
・直接外気に接する避難上有効な開口部
居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない
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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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