単体規定

排煙設備とは?|必要な建築物について。廊下などの非居室も必要?

PR

みなさん、建築基準法第126条の2の排煙設備は

建築物全体に設置が必要になる

建築物の一部の居室に設置が必要になる

この2つに分かれている事は知っていますか?

 

「え?一部の居室はわかるけど全体ってどういう事?」

と思った方もいるでしょうか。

そうです、全体というのは、居室、非居室全てという事です。

よって、便所、押入れ、倉庫、廊下すらも全て排煙設備が必要です。

 

排煙設備の設置を確認するポイントはココなんです。

設置基準を確認する事はもちろんなのですが、建物全体に排煙設備が必要なのか、建物の一部の居室だけ排煙設備が必要なのか。

今回はこの全体か、一部か、というポイントに絞って排煙設備の設置基準について確認をしてみましょう。

そうすれば、廊下や倉庫など非居室も排煙設備が必要な場合がある、という事がわかるはずです。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

排煙設備の設置基準は全体か一部の居室に分かれる

冒頭でもご説明しましたが、排煙設備は全体に必要なのか、一部なのか法文で読み取る事ができます。

建物全体に排煙設備が必要 建物の一部の居室に排煙設備が必要
法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの

階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物

第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室

延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの

 

施行令第126条の2
法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物建築物の高さが31m以下の部分にある居室で、床面積100m2以内ごとに、間仕切壁、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの以下「防煙壁」という。によつて区画されたものを除く。)、第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの建築物の高さが31m以下の部分にある居室で、床面積100m2以内ごとに防煙壁で区画されたものを除く。)には、排煙設備を設けなければならない。

 

いくつか具体例を挙げて確認する

延べ面積500㎡超の共同住宅(特殊建築物)の場合

まず、建築物全体 か 一部居室 なのか確認します。

法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの

よって、建築物全体に必要です。

ちなみに、延べ面積500㎡は共用廊下、共用階段を面積を含みます。共用廊下、共用階段が算定面積から除かれるのは、あくまで容積率算定の時のみなので、今回の500㎡超えるかどうかという点では算入です。

建築物全体に排煙設備が必要なので、共同住宅の住戸の居室、非居室はもちろん、廊下、共同住宅の為の集会室、共同住宅の車庫、全て排煙設備を設置してください。

「共同住宅の住戸内はただし書きで適合させろよ!!」

と詳しい方は考えると思いますが、(確かに条件を満たせば施行令第126条の2第1項一号で免除できますが)ひとまず、原則は必要ですよ!!という説明をさせてください。(笑)

 

それから、共同住宅300㎡+事務所300㎡の複合用途の時ってどうなると思いますか?

これは、排煙設備の検討が必要です。

防火避難規定の解説より、複合用途の場合は合算して500㎡超えるかカウントせよとありますので、ご注意ください。

 

あと、これは大丈夫かもしれませんが、全ての特殊建築物500㎡超に排煙設備が必要なわけではありません。別表(1)〜(4)なので、原則人が利用する特殊建築物のみなので、主要用途が車庫だったりしたら、不要です。

 

階数3階、延べ面積500㎡超の事務所の場合

階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物

という事で、建築物全体です。

事務所は特殊建築物ではありませんが、規模が大きいと排煙設備の検討が必要になってきます。

しかし、この条件で排煙設備が必要になった場合は適合はそんなに難しくありません。

 

図面上で、一部排煙免除になっている箇所がありますよね?なぜでしょうか?

ここで、法文に戻って後ろにある()書きを確認してください。

階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物(建築物の高さが31m以下の部分にある居室で、床面積100m2以内ごとに、間仕切壁、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの以下「防煙壁」という。)によって区画されたものを除く。

よって、区画されていれば、排煙は除けます。

たまに、この区画をすれば先ほどご紹介した500㎡超の殊建築物でも除けると思っている方がいますが、それはできません。

 

事務所の一部屋が排煙無窓になる場合

排煙無窓というのは、施行令第116条の2第1項二号の窓が無いという事。

よって、

第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室

つまり、一部の居室のみ排煙設備が必要です。

『施行令第116条の2第1項二号の検討』と『施行令第126条の2の排煙設備の検討』は似ているようでまったくの別物です。

そちらについては以下の記事で詳しく解説しています。

 

全体の面積1000㎡超の倉庫の中に200㎡超の居室がある場合

延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの

と、言うわけで一部の居室ですね。

こちらも一部居室でも免除されているようです。

法文を確認しましょう。

延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの建築物の高さが31m以下の部分にある居室で、床面積100m2以内ごとに防煙壁で区画されたものを除く。

よって、区画されていれば除けます。

まぁ、実務でこの条件で排煙設備が必要になったことがないので、あんまり無いかもしれませんね。頭の片隅に入れておくぐらいでいいと思います(笑)

 

排煙設備には免除規定が多くある

さて、排煙設備が居室どころか、非居室が必要な事がわかりました。

つまり法文上だと、建物によっては、便所だろうと小さな部屋だろうと、すべて室に排煙設備が必要になるという事ですね!

ちょっと待った!

そんな便所とか押入の細かいところまで排煙設備を設置してる建物なんか、見た事ないわよ!

それは、『排煙設備の免除』を上手く利用しているから!

排煙設備の免除は数も多く、そして意外と使いやすい!

排煙設備は多くの免除規定があります。

設計次第では、排煙設備が必要な建築物でも、排煙設備を設置しない事も可能です。

排煙設備の緩和については以下の記事で詳しく解説しています。

 

まとめ:建物全体に排煙設備が必要なら、非居室も排煙設備必要!

今回は、排煙設備が必要な建築物について解説しましたが、いかがでしたか?

 

繰り返しにはなりますが、

建物全体に排煙設備が必要になる

法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの

階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物

こちらに該当する場合は、非居室含めた建物全体に排煙設備が必要です。

もし該当したら、非居室である廊下や物置などの検討もお忘れずにお願いします!

 

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

PR