単体規定

火気使用室の内装制限の緩和について【告示225号解説】

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キッチンのコンロ周りだけ内装制限すれば良いっていう緩和があるけど

法文難しい…わからない…

こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。

その『コンロ周りだけ内装制限をすれば良い』という緩和の正体は『告示第225号』です。使いたい方が多いにも関わらず、読みづらく、わかりにくい法文です。

こちらの緩和、令和2年12月に法改正がありました。

従前は一戸建て住宅にしか使えませんでしたが、改正後は一戸建て住宅以外も使えるようにな理ました!

そちらの内容に訂正しました!

twitter:sozooro

要点をまとめると、以下のようになります。

✔︎コンロ周りの内装制限を強化する代わりにコンロ周り以外は難燃材料等でokになる

✔︎コンロ周りの内装制限は長期加熱部分短期加熱部分の2段構えの制限になる

✔︎正直、木造建築物には使いにくい(理由あり!)

では、内容についてわかりやすく解説していきます。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

火気使用室の内装制限の緩和、メリットは?

火気使用室のコンロ周りの内装制限を強化する事によって

コンロ周り部分以外の内装材料は難燃材料等※でokになる

※…難燃材料or告示第1439号第1第二号に規定する木材等

一戸建て住宅でも、火気使用室は内装制限の規制がかかります。(ただし、平家と2階建ての2階部分を除く)天井、壁の内装材料の規制ですね。内装、という事はもちろん一番表面の部分なので、部屋の印象を大きく変える要素です。これらを『準不燃材料』にしなくてはなりません。準不燃材料については以下の記事を参考に。

その範囲はどこまでか?それは、原則『部屋全体』です。

だから、住宅のLDKなどの場合、キッチンが火気使用をするのであればLDK全体の壁や天井を準不燃材料にしなくてはいけません。もし、内装材料を準不燃材料以外にしたい!となっても、建築基準法上、原則許されないのです。

ここで、有効な緩和があります。今回ご紹介する『告示第225号』です。

コンロ周りだけは、内装制限は厳しくなりますがコンロ周り部分以外の内装材料は難燃材料等※でokになります。だから、お洒落な内装を使う事も可能になるかもしれません。

ちょっと待った!コンロ周りの内装制限が強化されるのはわかった。

でも、結局コンロ周り以外も難燃材料にしなきゃいけないってほんと!?

ほんとです!でも、告示第1439号第1項第二号のものであれば、難燃材料以外であっても使えるので安心してください!

なぜか、この緩和を使うとコンロ周り以外は無制限になると勘違いしている方が多いですが、実はそうでは無いのです。告示第1439号第1項第二号に適合するものにする必要があります。告示の内容を乗せておきますね。


壁の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げにあっては、木材、合板、構造用パネル、パーティクルボード若しくは繊維版(これらの表面に不燃性を有する壁張り下地用のパテを下塗りする等防火上支障がないように措置した上で壁紙を張ったものを含む。以下「木材等」という。)又は木材等及び難燃材料ですること。

 

では、続けて緩和の適用要件を確認してみましょう。

まずは法文から要件を確認する

まずは、告示第225号を確認して要件をまとめてみましょう!

告示第225号

建築基準法施行令(以下「令」という。)第128条の5第1項第二号ロに規定する準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる材料の組合せは、令第128条の4第4項に規定する内装の制限を受ける調理室等(令第128条の5第1項から第5項までの規定によってその壁及び天井(天井のない場合においては、屋根。以下同じ。)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを同条第一項第二号に掲げる仕上げとしなければならない室及びホテル、旅館、飲食店等の厨房その他これらに類する室を除く。)にあっては、次の各号に掲げる当該室の種類に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 こんろ(専ら調理のために用いるものであって、一口における一秒間当たりの発熱量が四・二キロワット以下のものに限る。以下同じ。)を設けた室(こんろの加熱部の中心点を水平方向に二十五センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に八十センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを不燃材料(平成十二年建設省告示第千四百号第一号から第八号まで、第十号、第十二号、第十三号及び第十五号から第十八号までに規定する建築材料に限る。以下「特定不燃材料」という。)でしたものに限る。)に壁又は天井が含まれる場合にあっては、当該壁又は天井の間柱及び下地を特定不燃材料としたものに限る。) 次に定める材料の組合せであること。
 こんろの加熱部の中心点から天井までの垂直距離(以下この号において「こんろ垂直距離」という。)が二百三十五センチメートル以上の場合にあっては、当該中心点を水平方向に八十センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に二百三十五センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを特定不燃材料でしたものに限る。以下「こんろ可燃物燃焼部分」という。)の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを、次の(1)又は(2)に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該(1)又は(2)に定めるところによりするものとする。
(1) こんろ可燃物燃焼部分の間柱及び下地を特定不燃材料とした場合 特定不燃材料ですること。
(2) (1)に規定する場合以外の場合 次の(i)から(iii)までのいずれかに該当するものですること。
(i) 厚さが十二・五ミリメートル以上のせっこうボードを張ったもの
(ii) 厚さが五・六ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板又は繊維強化セメント板を二枚以上張ったもの
(iii) 厚さが十二ミリメートル以上のモルタルを塗ったもの
 こんろ垂直距離が二百三十五センチメートル未満の場合にあっては、こんろの加熱部の中心点を水平方向に八十センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方にこんろ垂直距離だけ移動したときにできる軌跡の範囲内の部分及び当該中心点の垂直上方にある天井部の点を二百三十五センチメートルからこんろ垂直距離を減じた距離だけ移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを特定不燃材料でしたものに限る。)の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを、イ(1)又は(2)に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該(1)又は(2)に定めるところによりするものとする。
 イ又はロの規定にかかわらず、こんろの加熱部の中心点を水平方向に二十五センチメートル移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に八十センチメートル移動したときにできる軌跡の範囲内の部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを特定不燃材料でするものとする。
 イ又はロに規定する部分以外の部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料又は平成十二年建設省告示第千四百三十九号第一第二号に規定する木材等(以下「難燃材料等」という。)でするものとする。

こんなに複雑なの!?頭痛い…
色々書いてあるけど、色分けしてある通りに分類すると、そんなに難しい話はしてない!
緩和を適用させる為の4つの要件

以下4つ全てに適合させる事

火気使用室で、コンロの一口における一秒間当たりの発熱量が4.2キロワット以下である事(ただし、『他の条件で内装制限を受ける室』と『ホテル、旅館、飲食店等の厨房その他これらに類する室』を除く)

長期加熱部分(水平25㎝、垂直80㎝の円錐)の 下地と内装 を特定不燃材料にする事

短期加熱部分(水平80㎝、垂直235㎝の円錐 他条件有り)の 下地と内装 を指定された材料にする事

長期加熱部分、短期加熱部分以外の内装材料は難燃材料等にする事

①は読んでそのまま。④については緩和のメリットで説明した通りなので、①②③について詳しく解説していきます。

緩和が使える室とは?

火気使用室の全てが使える訳ではなく、以下の室においては緩和が使えません。

緩和が使えない室とは?

令第128条の5第1項から第5項までの規定によって壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でした仕上げ又はこれに準ずる仕上げとしなければならない室

②ホテル、旅館、飲食店等の厨房その他これらに類する室

続けて上記2つが、どうして緩和が使えないのか説明します。

①は火気使用設備の有無に関わらず内装の制限を受けるなら、緩和の対象外となっています。

内装制限は、火気使用室以外の室でも規制を受けることがあります。例えば、所定の規模以上の特殊建築物や、無窓の居室などです。これらの室については、緩和は使えません。詳しくは、以下の記事で解説しています。

②は、ホテル、旅館、飲食店は、一般的に使用される調理器具よりも大きなものを使用することが想定されるので、対象外となっています。

詳しくは、技術的助言で解説されているので、合わせて確認してみてください。

準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件の一部を改正する件の施行について(技術的助言)

長期加熱部分の範囲、規制内容とは?

コンロ周りの内装制限は長期加熱部分短期加熱部分の2段構えの制限になっています。その2弾構えの規制を確認してみましょう。

長期加熱部分とは、通常の調理などの使用時における継続的に加熱される部分。一番厳しい規制を受ける部分です。

範囲
規制内容 下地 特定不燃材料
内装 特定不燃材料

ポイントは、下地も特定不燃材料という事です。

特定不燃材料とは?

コンクリート
れんが

陶磁器質タイル
繊維強化セメント板
厚さが三ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板
厚さが五ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
鉄鋼
金属板
モルタル
しっくい

厚さが十二ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが〇・六ミ リメートル以下のものに限る。)
ロックウール
グラスウール板

以下の記事で特定不燃材料について詳しく解説しているので確認してみてください。

短期加熱部分の範囲、規制内容とは?

短期加熱部分とは、天ぷら油火災のような異常時の加熱されてしまう部分。長期加熱部分よりかは範囲は広いです。

短期加熱部分について押さえてほしいポイントは2点あります。

✔️短期加熱部分は『コンロから天井までの垂直距離が235㎝以上か?未満か?』で規制範囲が異なる

✔️規制内容は①②の2つあり、どちらかに適合させればok

では、コンロの垂直距離毎に確認していみましょう。

コンロから天井までの垂直距離≧235㎝

範囲
規制内容① 下地 特定不燃材料
内装 特定不燃材料
規制内容② 下地 (規制無し)
内装 以下のいずれかに該当させる

・12.5mm以上のせっこうボード

・5.6mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板又は繊維強化セメント板の2枚貼り

・12mm以上のモルタル

 

コンロから天井までの垂直距離<235㎝

範囲
規制内容① 下地 特定不燃材料
内装 特定不燃材料
規制内容② 下地 (規制無し)
内装 以下のいずれかに該当させる

・12.5mm以上のせっこうボード

・5.6mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板又は繊維強化セメント板の2枚貼り

・12mm以上のモルタル

 

どうして木造建築物には使いにくいのか?

この緩和、実は木造建築物には使いにくいです。

理由は、長期加熱部分短期加熱部分の規制に適合させる事が難しい為です。なぜなら、木造建築物は下地を『特定不燃材料』に出来ないからです。

だから、木造建築物を長期加熱部分と短期加熱部分を適合させるには必然的に以下のようにするしか選択肢がありません。

長期加熱部分 壁、天井を範囲から外すしかない
短期加熱部分 下地 (規制無し)
内装 以下のいずれかに該当させる

・12.5mm以上のせっこうボード

・5.6mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板又は繊維強化セメント板の2枚貼り

・12mm以上のモルタル

長期加熱部分は、範囲が狭いのでその範囲内に壁天井の計画をしなければいいのですが、短期加熱部分をせっこうボードなどを内装材料しなくてはいけないという事です。

だから、木造建築物には使いにくいです。

まとめ:緩和の要件をしっかり抑えて適用させよう

最後のおさらいに緩和の要件をおさらいしましょう。

緩和を適用させる為の4つの要件

以下4つ全てに適合させる事

一戸建て住宅住宅以外を兼ねる場合、床面積の合計が延べ面積の1/2超or50㎡超除くでコンロの一口における一秒間当たりの発熱量が4.2キロワット以下である事

長期加熱部分(水平25㎝、垂直80㎝の円錐)の 下地と内装 を特定不燃材料にする事

短期加熱部分(水平80㎝、垂直235㎝の円錐 他条件有り)の 下地と内装 を指定された材料にする事

長期加熱部分、短期加熱部分以外の内装材料は難燃材料等にする事

最後までありがとうございました!

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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