建築基準法

耐火建築物、耐火構造物、耐火性能、整理できてる?

 

建築基準法には様々な用語の定義があります。

特に○○建築物、○○構造、○○性能は言葉は似ていても、法文上の意味は異なります。

簡単まとめると、

○○建築物→建物全体
○○構造→壁、床、柱、梁、階段、屋根(建築物の部分)
○○性能→○○構造で要求されている性能

これだけだとわかりにくいですよね(笑)

もう少し詳しくご説明していきます。

○○建築物、○○構造、○○性能は 耐火と準耐火の2パターンが当て嵌ります。

耐火建築物系と、準耐火建築物系とで法文の構成が異なっているのでそれぞれに分けて関係性や用語を見てみましょう。

 

耐火建築物、耐火構造、耐火性能

それぞれの用語の関係はこのようになります。

 

まず、耐火建築物とは、主要構造部が耐火構造➕延焼ラインに防火設備です。

法文で確認してみましょう。

 

法第2条九の二 耐火建築物
次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

 その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。

 (1) 耐火構造であること。

 (2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。

  (i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

  (ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。

 その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備その構造が遮炎性能通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第27条第1項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。を有すること

 

法文としては、冒頭に“いづれか”の表記がないので、イとロ どちらも満たさないと耐火建築物になりません。

よって、耐火建築物とは、主要構造部が耐火構造➕延焼ラインに防火設備となります。

ちなみに、イ (2)は耐火性能検証法によるものです。耐火建築物にする為に、主要構造部が耐火性能検証法➕延焼ラインに防火設備でももちろんok。

 

続いて、耐火構造についてです。

法文を見てみましょう。

 

法第2条七 耐火構造
壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

 

耐火構造とは壁、柱、床などの建築の部分で耐火性能を有するものです。

耐火建築物で求めているのは主要構造部が耐火構造なので、壁、床、柱、梁、屋根、階段全て耐火構造にしなければならないと言う事です。

ここで耐火性能が出てくるんですね。

耐火性能とは、“通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能”を指し、耐火構造で求められている性能という事です。(詳細は施行令第107条)

 

準耐火建築物、準耐火構造、準耐火性能

耐火と似ていますが、用語の関係はこのようになります。

 

準耐火建築物も基本的には主要構造部が準耐火構造➕延焼ラインに防火設備となります。

では、法文を確認してみましょう。

 

法第2条九の三 準耐火建築物
耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。

 主要構造部を準耐火構造としたもの

 イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの

 

耐火建築物とは、主要構造部が準耐火構造➕延焼ラインに防火設備となります。

ちなみにイ かロに適合させ、延焼ライン内に防火設備を設置すればいいのですが、イ に適合している構造イ 準耐ロに適合している構造ロ準耐と分けています。

なので、主要構造部を準耐火構造にしているとは、イ準耐という事です。

もちろん、ロ準耐➕延焼ラインに防火設備でも準耐火建築物になります。

 

続けて、準耐火構造の法文を確認しましょう。

 

法第2条七の二 準耐火構造
壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロにおいて同じ。に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

 

準耐火構造とは壁、柱、床などの建築の部分で準耐火性能を有するものです。

準耐火性能とは、“通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能”を指し耐火構造で求められている性能という事です。(詳細は施行令第107条の2

 

まとめ:「耐火建築物」=「主要構造部が耐火構造+防火設備」

もう、結論はこれしかありません。

(色々ややこしい話があるのですが)

 

耐火建築物や、準耐火建築物には防火設備必須です。

そして、主要構造部が耐火構造にする場合全ての主要構造部を耐火構造としてください。(例えば、階段を耐火構造にしなかったら主要構造部は耐火構造にならないです)

そして、耐火構造に求められている性能が耐火性能となるのです。

※ちなみに、省令準耐火構造という物もありますが、あちらは基準法とは一切関係ありません。(単に住宅金融支援機構が定めたもの)

 

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』