単体規定

非常用進入口共同住宅の特例とは?玄関ドアまたはバルコニーから進入!

PR

 

3階以上の建物には非常用進入口(代替進入口)の設置が義務付けられています。

共同住宅も必要なのですが、唯一の特例が設けられており比較的簡単に法適合させる事が可能です。

パターンとしては、

廊下 階段室 各バルコニー

いづれかに進入する3つの方法があります。今回は共同住宅の特例について、ご紹介します。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

廊下、階段室、各バルコニーいづれかに進入する

廊下から玄関ドアへ進入する場合

廊下に進入し、全住戸の玄関ドアへの歩行距離が20m以内

消防隊員が廊下に進入し、各住戸の玄関ドアまで行き、玄関ドアを破壊して進入します。

特例を利用すると、しないのとではどんなメリットがあるのか、具体例を挙げてご紹介します。

 

✖︎非常用進入口の特例を利用しない(道路に面して開口部を設けなければならない)

 

○非常用進入口の特例を利用する(道路に面して開口部は不要になる)

このように、設置する開口部の数を減らすことができます。

場合によっては共同住宅の特例にした方が良さそうですね!

 

階段室の踊り場部分から玄関ドア進入する場合

階段室の踊り場部分に進入し、全住戸の玄関ドアへの歩行距離が20m以内

こちらは、先ほどご紹介した廊下に設けるケースに似ていますね。

ここで、注意点としましては、

階段室の踊り場部分であるという事

階段の中途半端な部分ではなく、踊り場部分とする必要があります。

消防隊員が安全に進入するためですね。

 

各住戸のバルコニーから進入する場合

各住戸のバルコニーに進入可能

各住戸のバルコニーに消防隊員が進入して消火活動を行う事ができるので、こちらも認められています。

 

✖︎非常用進入口の特例を利用しない(10m以内ごとに開口部を設けなければならない)

 

○非常用進入口の特例を利用する(開口部は不要になる)

 

ここで、みなさんお気づきになりますでしょうか。

廊下や階段室の踊り場部分と違い、距離の話が無くなっている事に!

 

これってどういう事でしょうか?

それは、各住戸のバルコニーに進入というのは一番手前の住戸に進入し、隔板を壊して隣の住戸に進入するのは認めていないという事です。

↓こういう事です。

 

あくまで、各住戸のバルコニーが道路か4m通路に面する必要があるという事です。

防火避難規定の解説でも、それぞれの住戸のバルコニー部分に進入している事になっています。

たまに勘違いしている方がいらっしゃるのでよく確認をお願いします。

『建築物の防火避難規定の解説2016 P96』

 

道に面する1住戸の計画ではだめなのか?

さて、みなさん下の計画についてどう思いますか?

これってだめなんじゃ無いの?と思う方もいらっしゃると思いますが、、

だめじゃありません。(基本的には)

理由は、これが法文上の正攻法だからです。

 

お気持ちは凄く分かります。

一番手前の住戸には進入できるのに、他の住戸に進入する為には一回廊下に出て、また各住戸の玄関ドアから進入しなければなりません。

共同住宅の特例の方が、消火活動がしやすいのは想像できますよね。

しかし、これでもokという事になっています。(念の為に申請先に確認すべきとは思いますが)

 

玄関ドアって「進入を妨げる構造」になるのでは?

これ、疑問に思う方多いみたいですね。

確かに、玄関ドアは正真正銘の「進入を妨げる構造」になっています。(絶対に鍵付きだし、割れるようなガラスでも無いですし)(「進入を妨げる構造」についてはこちら

でも、「進入を妨げる構造」であっても何も問題は無いのです。

代替進入口と玄関ドアの破壊方法は違うんですよ!!!!って言うのが理由です。

代替進入口ってはしご車に乗った不安定な足場から窓を破壊するので、破壊しやすい構造にしなければなりません。

しかし、共同住宅の廊下のような足場がしっかりしているところの場合は、ガチガチの破壊器具を使って消防隊員はドアを破壊します。足場があるので。

その違いがあるので、玄関ドアでもokという事になっているんです。

 

ただし、建物内に入る開口部は「進入を妨げる構造」としてはなりません。

例えば、非常用進入口で階段室型の特例を利用する場合です。仮に、階段室と廊下の間に扉があった場合はその扉は「進入を妨げる構造」としてはなりません。

想定されるケースとしては、階段室と廊下の間は竪穴区画が必要なケースが多いと思います。竪穴区画は常時閉鎖、遮煙性能を有する防火設備にしなくてはなりません。その部分は鍵無しにしないと、解放不能ドアになってしまいます。

玄関ドア と 建物内に進入する部分 では取り扱いが違うというのは覚えておきましょう。

 

まとめ:共同住宅の特例は上手く利用すべし

3階建ての共同住宅の場合、ほとんどが共同住宅の特例を利用して適合させている方が多いです。

それほど、計画しやすいと言えると思います。

また、共同住宅の特例は実際に消防活動をする上でも各住戸に効率よく進入できる計画となっているので、エンドユーザーさんの為にも積極的に利用していきましょう!

 

その一、共同住宅の特例は階段室 廊下 各バルコニー いずれかに進入できる

その二、各バルコニーに進入する場合、隔て板を介して進入は認められない

その三、玄関ドアは「進入を妨げる構造」になっていてもok

その四、建物内に進入する部分については「進入を妨げる構造」はNG
ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

PR