指定確認検査機関の法解釈が緩い事は、設計者によって良い事なのか

『建築基準法は曖昧な法文で、読み手によって異なる解釈になる』

これは、前月のコラム(建築基準法はグレーゾーンが有った方がいい理由)で解説した内容です。つまり、申請先の指定確認検査機関の解釈が緩ければ、建築基準法に適合しているか疑義がある建築計画でも、適合していると判断される可能性もあるという事です。これを利用して、指定確認検査機関に片っ端から解釈を聞いて回って、緩い解釈をしている指定確認検査機関を探す設計者も居る様です。

しかし、本当に設計者にとって指定確認検査機関の解釈が緩い事は良い事なのでしょうか?確認済証の交付さえされれば、指定確認検査機関が緩く法解釈した計画、つまり建築基準法に疑義がある計画をしても良いのでしょうか?これに対して、私はNOだと考えています

その理由は、指定確認検査機関の法解釈が緩い計画を進める事で、後から出てくる大きなリスクがあるからです。

指定確認検査機関の法解釈が緩い計画を進める事によるリスクとは?

建築計画において、最悪の結末を考えてみてください。それは、建築物が竣工、又は工事中に建築基準法違反が発覚し、最終的に是正が出来ず、建物を壊すしか無い事ではないでしょうか。着工前ならまだしも、着工後だと相当な損害が発生します。これだけは避けたいところですよね。

このような事態を防ぐ為に用意された手続きが『確認申請』です。確認申請とは、特定行政庁、又は指定確認検査機関が、着工前に建築計画が建築基準法に適合しているかどうかチェックする、建築基準法で定められた手続きです。(建築基準法第6条)このような第3者からのお墨付きをもらった建築計画、つまり『確認済証』を受けた建築計画のみ、工事の着工が可能となるのです。これで安心して工事を進める事が出来ますね。

では、ここで指定確認検査機関の解釈が緩い場合を考えましょう。指定確認検査機関は先ほどお伝えした通り、確認済証を発行する事が可能です。だから、建築基準法に若干疑義がある計画でも、指定確認検査機関の法解釈によって適合とみなされれば、着工する事が可能です。しかし、問題は着工後にこの法解釈に横槍が入り、建築基準法違反と判断される可能性があるという事です。

もし、そんな横槍が入ると、最悪の結末である『建物を壊すしか無い』という事態が発生する可能性があります。

どうしてさっきから特定行政庁では無く、指定確認検査機関の法解釈の問題についてを取り上げているのか?

今読んでいる方に中には、どうして確認済証の交付の権限は特定行政庁もあるのに、指定確認検査機関の法解釈の問題を中心に取り上げているのか気になってきた方もいるのではないでしょうか?これには理由があります。

それは、特定行政庁より指定確認検査の方が立場が弱いからです。もし特定行政庁と指定確認検査機関で法解釈が異なった場合、ほぼ100%、特定行政庁の法解釈が正しいとされます。その理由は2つあります。

1つ目の理由は、指定確認検査機関が行う確認済証の発行は『特定行政庁が行う行為の、みなし行為だから』です。建築基準法で確認してみましょう。

(国土交通大臣等の指定を受けた者による確認)建築基準法第第六条の二

前条第一項各号に掲げる建築物の計画(前条第三項各号のいずれかに該当するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。

このように、『みなす』とあります。要は、指定確認検査機関の行う確認済証の発行は、特定行政庁が行う確認済証の発行の行為とみなされているだけなのです。だから、みなし先の特定行政庁にNOと判断されると、その考えを覆す事は難しいです。

2つ目の理由は、『特定行政庁は確認済証を失効させる権限を持っているか』です。これは指定確認検査機関には無い権限です。要するに、指定確認検査機関が誤った解釈をして交付した確認済証を、特定行政庁は取り消す事が可能です。

だから、特定行政庁と指定確認検査機関の解釈が異なった場合、特定行政庁の判断が正しいとされます。

もし、指定確認検査機関が緩い判断をして、その結果、特定行政庁から横槍が入り確認済証の取り消しをされると、最悪の事態である建築物と壊す事が有るかもしれません。
だから、緩い法解釈をする事でリスクがあるのは指定確認検査機関なのです。

指定確認検査機関の法解釈に特定行政庁から横槍が入る3つのケース

指定確認検査機関は確認済証を交付した後に、特定行政庁に対して報告をします。その報告の図面は、案内図と配置図のみです。(概要書3面の内容)案内図と配置図のみだと、法適合を確認する為の情報としては不足します。だから、通常通りだと指定確認検査機関が交付した法解釈に横槍が入る可能性は低いです。

しかし、完全に無いとは言えません。私が知る限り、指定確認検査機関の法解釈に横槍は入るケースは3つあります。

1つ目は、『近隣クレームから派生する12条5項の報告、又は審査請求があった場合』です。工事中、建築計画を良く思わない近隣住民は特定行政庁に対してクレームを言います。『あの建物は建築基準法に適合して無いんじゃないか?工事を中止に出来ないか?』とイチャモンを付けてくるのです。さらに、審査請求(裁判では無いけど、少し似ている手続き)を行う場合もあります。そうすると、特定行政庁は指定確認検査機関に対して、図面一式の提出を求め(12条5項の報告)、法適合の再チェックをします。そこで、指定確認検査機関の解釈が緩い場合だと、横槍が入る可能性があります。

2つ目は、『地区計画、省エネの届出、長期優良住宅などの申請があった場合』です。
これらの申請した方はわかると思いますが、地区計画や省エネ法の手続きでは、案内図配置図に加え、平面図立面図などの図面を提出していると思います。この図面を見て、横槍が入る可能性があります。

そして、最後の3つ目は『特定行政庁が指定確認検査機関に監査を行う場合』です。指定確認検査機関は、国土交通省から指定を受けて業務を行なっています。登録ではなく、指定です。誰でも出来るわけではなく、国土交通省から選ばれて業務を行なっています。だから、指定している国土交通省も、指定確認検査機関がちゃんと適切に業務を行なっているかチェックをする必要があります。その為に、国土交通省や特定行政庁は時々、指定確認検査機関の業務の監査をする事が有ります。その時に、図面一式を再度確認するので、その時に横槍が入る可能性があります。

リスクを回避する為の対策は?

指定確認検査機関の緩い法解釈に対して、特定行政庁から横槍が入り、最悪の場合は確認済証の取り消しがされて建築物を壊す事になる。これは、最悪のケースですよね。

だから、指定確認検査機関の解釈が緩い事は良い事とは言い切れません。設計者さん自身もトラブルを避ける為に対策をたてる必要があります。

一番の対策は、指定確認検査機関には申請せずに、特定行政庁に申請をする事です。なぜなら、横槍は入る可能性が低くなるからです。

しかし、特定行政庁より今は指定確認検査機関への申請がメジャーなので、指定確認検査機関に申請したいと考える方も多いと思います。指定確認検査機関に申請する場合は、怪しいと思ったところは特定行政庁にも確認をして、しっかり担当者の名前、日付、協議内容を記録しておくべきでしょう。

たまに、指定確認検査機関から『この内容は特定行政庁の指導を確認してください』との指示があるかと思います。これは責任を押し付けようとしているわけではありません。横槍が入った時に、設計者を守る為の対策でもあるのです。

指定確認検査機関だけでなく、特定行政庁も巻き込んで、トラブルを避けて計画を進めるようにしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!