単体規定

【竪穴区画の免除②】共同住宅長屋のメゾネット住戸の免除

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今回は『竪穴区画のメゾネット形式の場合』の記事です。

 

竪穴区画が必要になった建築物は『吹抜部分(階段部分)』と『その他の部分』に区画が必要です。

そこで、『メゾネット形式』の時はどうなるのか?

という事について解説していきます。

 

結論から言いますと、

共同住宅・長屋 竪穴区画(階数3階以下かつ面積200㎡以下の場合)不要
その他の用途(ホテル等) 竪穴区画(原則)必要

となります。

 

共同住宅や長屋は竪穴区画不要にできますが、ホテルなどはメゾネット形式は原則できません。

ただし、書いてある通りなのですが、“原則必要”なので、不要な場合もあります。

そちらも合わせてご紹介していきます。

 

竪穴区画が必要な建物の判断はこちらから。

 

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

そもそもメゾネットは竪穴区画必要なのか?

メゾネットって大体2階層分だけでしょ?3階層分ではないなら、竪穴区画はいらないはずでしょ!

勘違いしやすいところなのですが、原則必要です!それは、法文を読み解くとわかりやすい。

言いたい事はわかります!

以下のように、3階層の階段は竪穴区画が必要で、2階層の階段は竪穴区画不要と考えているという事ですよね?

結論から言うと、これは竪穴区画必要です。

なぜなら、竪穴区画が必要なのは『建築物全体』だからです。

法文を見てみましょう。

 

建築基準法施行令第112条第十九号
主要構造部を準耐火構造とした建築物又は特定避難時間倒壊等防止建築物であつて、地階又は三階以上の階に居室を有するものの住戸の部分(住戸の階数が二以上であるものに限る。)、吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる公衆便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)については、当該部分(当該部分が第一項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分でその壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この項において同じ。)の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造つたものであつてその用途上区画することができない場合にあつては、当該建築物の部分)とその他の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とを準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

(省略)

 

 

このように、建築物となっています。

よって、竪穴区画がかかる建築物であれば、すべての吹抜部分(階段部分)で竪穴区画が必要です。

2階層の階段でも、もちろん竪穴区画が必要なんです。

 

竪穴区画の緩和は『建築物の部分』に適用できる。共同住宅長屋の住戸部分は緩和可能

さて、メゾネットも竪穴区画が必要とわかったところで、

共同住宅、長屋のメゾネットが竪穴区画が不要な理由を確認してみましょう。

 

先程、竪穴区画は『建築物全体』必要とお伝えしましたが、緩和は『建築物の部分』に適用可能な内容になっています。

その緩和の条文で、共同住宅長屋の住戸は緩和の対象になっています。

それは、法文に記載があります。

 

建築基準法施行令第112条第十九号
(省略)

ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りでない。
一 (省略)
二 階数が3以下で延べ面積が200m2以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200m2以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

 

共同住宅、長屋のメゾネットタイプの住戸は階数3階以下かつ200㎡以下は竪穴区画不要

となるわけです。

整理すると、以下のような感じ。

3階建ての共同住宅(主要構造部が準耐火構造)

建築物全体で竪穴区画が必要

住戸の面積200㎡以下、かつ階数3の住戸は竪穴区画不要(メゾネットの区画不要)

緩和できるメゾネット住戸以外の階段は竪穴区画必要(共用階段など)

 

他の用途は、原則竪穴区画が必要になる

たとえば、ホテルや寄宿舎でメゾネットの計画をしたい!という事もあると思います。

その場合、どうしても竪穴区画は必要になります。

なぜなら、先程ご紹介した通り、法文上は共同住宅と長屋に限定しているので、他の用途では使えないから。

 

しかし、一応、抜ける方法もあります。

ただし、結構条件が厳しいのであまり期待しないで目を通してください!

 

共同住宅、長屋以外でも竪穴区画を免除する方法

それは、以下の2点の条件を満たす事です。

〈竪穴区画を免除する条件〉
①避難階からその直上階、直下階のみの階段(吹抜)
②仕上 及び 下地 を不燃材料

…厳しいですよね!

法文でも確認してみましょう。

 

建築基準法施行令第112条第十九号
(省略)

ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りでない。
一 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの
二 (省略)

 

まず、避難階からその直下階、直上階という事は、

例えば避難階が1階だとしたら、1階と2階の階段部分 または 1階と地下1階の階段部分

しか使えません。

 

そして、仕上、下地を不燃材料という点

まぁ、仕上を不燃材料っていうのは工夫すれば可能ですが、

下地が不燃材料というのは、木造では不可能です。

 

よって、できない事はないけど、かなり厳しいのでできないと思っておいた方がいいかもしれません。

 

まとめ:メゾネットタイプ、竪穴区画が免除されるのは共同住宅、長屋のみ

今回の記事で抑えていただきたいのは3点

①竪穴区画は『建築物全体』にかかる法文
②竪穴区画の免除はあくまで共同住宅、長屋の住戸の部分のみ(共同住宅の共用部などは竪穴区画必要)
③共同住宅、長屋の住戸で階数が3階以下 かつ 面積200㎡以下のみ竪穴区画不要

共同住宅、長屋のメゾネットタイプは可能ですが、ホテルのメゾネット計画は不可能と思っておいた方がいいかもしれませんね。(方法は紹介しましたが、難しいと思うので)

 

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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